☆銀しゃ~りんです。☆

果てしないたわごとをつらつらと

【風景】

『あー、また来ちまった…』

幾度となく訪れている地ではあるが、何度も訪れてしまう道がある。何も考えずに走っているといつの間にかここにいる。

何かに導かれている?

そんな特別な事情や力など私にはない。ただ、なんとなく、この道が好きなのかもしれない。

『今日も遠回りか。。。まぁ、いっか!』

愚痴りながらも快調に走る。この道の途中に一件コンビニがある。名もない、個人経営のようなコンビニ。
そこに立ち寄りいつも缶コーヒーとパンを買う。
このコンビニは最近流行りだした手作りのパンを売っているコンビニだった。

私はここのメロンパンが好きだった。それとともに飲む缶コーヒーもまた。

『…これが食べたいから来ているのか?』

そう思いながら、一休みを終えると、また走りだす。
道の途中には一本の木がある。とても大きな木で、見ていると不思議な気がする木である。いつもこの木の下に行き、下の風景を堪能する。

『…この風景がみたいがために来ているのか?』

そう思いながら、また、車を走らす。

しばらく走ると海が見えてくる。夕日を描いた看板に【夕日が丘】とかかれている。

私はそこで夕日が沈むのを待ち、沈む夕日を眺めながら一日の終わりを感じながら、音楽を聞く。BGMはジャズが多い。

『この夕日を見てジャズを聞きたいがためにここに来るのか…?』


夕日が沈み、闇夜に包まれる頃、自分の居場所に帰る。

いつも訪れてしまう地のいつも訪れてしまう道。

軽く食事をし、風景を堪能し、夕日をみながらジャズを聞く。

かれこれ去く年月。
職を終え、フラフラと自由ができる年代になり、こんな旅を続けてはや6年になる。毎年訪れているこの道にも、以前なかったファミレスやなんかが立ち並び、昔の趣きはなくなってしまった。しかし、あのコンビニだけはまだある。
そこでいつものようにメロンパンとコーヒーを買い、堪能した後、木を見に行くと、そこには大型駐車場のコンビニができていた。
私はなんとも言えない気持ちで、コンビニの駐車場から風景を見下ろした。
いつもと変わらない風景なはずなのに、いつも違って見えた。
(…コンビニが悪いわけではない)
そう、自分に言い聞かせ、今度は夕日が丘に向かう。
夕日が丘は健在だった。しきし、夕日が丘の駐車場にはすでに数十台の車がエンジンを切り、静かに並んでいた。

どうやら、先週やっていたテレビ番組でここが夕日を見るには最高のスポットとして紹介していたようだ。
自分だけの風景ではないが、人が増えると独占欲が高まり、なんとも言えない気持ちになる。

(…もうこの道を訪れる事はないから…)


そう思いながら最後になるかもしれない夕日を眺めながら静かに車でジャズを聞く。

旅を終えて、家に帰る。

『ただいま』

『おかえりー』

(…やっぱり家が落ち着くな。)

あの道はもう訪れないようにしよう。。。

 

 

孫『おじいちゃんの経営してるコンビニの近くの夕日が丘この前おじいちゃんがテレビ紹介してかなり有名になってたよ!』

 

 

私は罪な男だ。