☆銀しゃ~りんです。☆

果てしないたわごとをつらつらと

【サクラの下には何がある】


季節は春。
だが、まだ肌寒い春。
テレビからは桜の開花や、お花見の情報が流れてきている。
私が住んでいる街からほど近い位置に桜の名所があるのだが、先日行った時にはまだ蕾だった。
こちらではまだまだ残雪があり、寒さに暖を取る日々が続いていた。

数日後、私は夢を見た。

〜おい!佐吉!おまえに頼みがある〜

〜あんた、誰だ?〜

〜いいから、聞けってんだ!〜

〜しょうがねぇーな…なんだってんだ?〜

〜おまえんちからほど近い所に桜の木があるな?あそこに俺がいる、助けてくんねーか?〜

〜なんだか穏やかじゃねーな?わかった!で、どうしたらいいんだ?〜

〜来ればわかる。じゃ、頼んだぞ!〜

〜おい!まて!こっちにも準備ってもんが!………

って所で、目が覚めた。

(夢か、いったいなんだったんだ?夢とは言え気になるな…)

妙に気になり、私は桜の名所を見に行った。

するとそこには、無数の穴が掘られていた。

(…こりゃー…イタズラか?誰がやったんだか…)

そこで、私は穴を埋める事にした。家にいったん引き返し、スコップを持って桜の木の所に行ってみると、見知らぬ男性が、手で穴を埋めていた。

佐吉「どこの何方か知りませんが、ありがとう。私も手伝います」

男「…こんなイタズラして、ひどいですね。見てられませんでした。援軍助かります」

二人で無数の穴を埋め終わる頃にはすっかり日が暮れていた。

佐吉「変な事を聞くが、夢に出てきた男じゃーないよね?」

男「へ?」

佐吉「いや、先日夢にぶっきらぼうな男がでてきて、ここの桜の木に来ればわかるから、助けちゃくんねーかい?と言われて来てみたら、この様だったんでね、あんたがその男かと思ったんです」

不思議そうな顔をしていた男性が、はっと何かに気がついて笑いだした。

佐吉「そりゃーおかしいですわな、すまんね変な事聞いて」

男性「いえいえ、あなたの夢に笑ったんじゃないんです」

そう男性は言うと、桜の木を見てポツリと呟きだした。

男性「私はね、去年もこの桜を見に来たんです。長年生きてきましたが、こんな見事な桜はないと思い、また来年も来ようと、そう思ってました」

佐吉「…それの何がおかしかったんです?」

男性「実はね、去年一緒に見に来た父もこの桜を気に入りましてね、親孝行も兼ねてまた来ようと約束していたんですが、先日倒れて…」

佐吉「それは…」

男性「その父というのがぶっきらぼうな物言いをする人でね、もしかしたらあなたに助けを求めたのも父じゃないかと思い、そこまで桜が気に入ったのかと思ったら妙におかしくなってね」

佐吉「そうなんかい…そこまで気に入ってもらえたら桜も喜んで花を咲かせるだろうねー」

男性「ええ。倒れた父も早く回復して、桜を見にこれたらいいんですが」

佐吉「そうですね、あ!そうだ、ここの桜の花弁を去年押し花にして飾ってあるんだが、よかったら持ってってくんな?」

男性「それは、ありがたい!父も喜ぶでしょう。花弁みて、見事な桜をまた見たい!と気をしっかりもってくれれば…」

佐吉「また、来てやってください」

男性「はい、ではまた」
そう言い残し、男性は帰っていった。
なんだが清々しい気分になった私は、一人まだ蕾の桜の木下で、酒を飲んだ。

(お前さんを見に来る人、みんな楽しみにしてるぞ!また元気に花を咲かせておくれ)

そう思い、うとうととしてしまった。

〜おい!佐吉!〜

〜あ、花弁は届いたか?〜

〜なーに言ってやがる、それより今日はすまねーな。助かったよ〜

〜ん?いいんだ、また桜見に来てくんな〜

〜ん?おめぇさん、何か勘違いしてねーか?〜

〜勘違い?あんた、今日来た親思いの男の父親じゃねーんかい?〜

〜…はぁ、やっぱ勘違いしてやがる!〜

〜あれ?違うんかい?じゃーあんた、何物だい?〜

〜おめぇさんの下に埋まってるもんだ〜

〜へ?ぎゃーーー………〜


(また、夢…か、しかし下って洒落になんねーな…)
と、寒さと夢にびっくりし飛び起きた。
目の前には、スコップを持った男が立っていた。

佐吉「誰だ!」

男「ひぃー!ごめんなさい!」

佐吉「おめぇか!昨日の穴やったのは!今日も堀りに来たのか!」

男「なんまんだー…なんまんだー…」

佐吉「お経唱える馬鹿があるか!生きとるわい!」

男「…はぁ…よかった」

佐吉「よくねー!何が目的だ!」

男「この丘に埋蔵金が埋まってるって話を聞いて堀に来てるんですが、一向にでなくてね」

佐吉「ねーよ!そんなもん!誰に担がれた!」

男「…夢を見たんです、あの桜の木下に埋蔵金隠したんだが、それ全部やるから掘っちゃーくんねーかい?って」

佐吉「…夢で夢見たんか」
男「…桜の下には…なんて話も聞くんで、あんたがいたときは何かの祟りかと…」

佐吉「しっかし…まぁ、これにこりたらもう来るなよ!埋蔵金なんてねーんだから。」

男「へぇ…」

(ったく…しかし同じような物言いだったな…また夢に出てくるだろうか?)

不思議な感じがして、家路を急ぎ、着いた頃疲れはて寝てしまった。

 

〜おい!佐吉!〜

〜また、おめぇか!ったく、馬鹿担ぎやがって!〜

〜ん?まーたなんか勘違いしてやがるな?〜

〜勘違い?おめぇさん、埋蔵金がどうのこうので馬鹿担いだんじゃねーんかい?〜

埋蔵金ってなんの事だか知らんが、自分で担いだんなら、助けなんて求めねーだろう〜

〜…そりゃそうか…じゃーいったい…〜

〜それより、代々伝わる桜が助かった、例を言うありがとう〜

〜しかし埋蔵金だなんて…まぁ、いいか?それよりしっかり花咲かせてな〜

〜あぁ…わかった、代々伝わるこの灰で見事に花を咲かせようじゃないか!〜

〜灰…〜

〜あ!埋蔵金!隣の偏屈じじいかもしんねーな!〜

〜へ?〜

〜以前、俺がふとした弾みで、囲炉裏の灰を桜の木にぶちまけてしまってな、そしたら桜は咲くわ、灰から砂金はでるわで大変だった時があるんだよ〜

〜……〜

〜そん時に隣の偏屈じじいが真似して灰をぶちまけたら、木に火が燃え移って大変だったんだ〜

〜あの畑か…〜

〜そう、桜はなくなったが、土壌は良くなってな、あの土地は元々俺のだったから、そのまま畑にして暮らしたんだ〜

〜偏屈じじいは?〜

〜火に巻き込まれて大火傷、一命はとりとめたが、村にはいられなくなってどっかいっちまいやがった〜

〜なるほどね、まさかそんな流れがあったとはねー〜

〜あぁ、俺の話は一部改善されて昔話として語られているらしいな〜

〜あ!あんたもしかして、花さ…………〜

 

(夢か。なんだか…)

不思議な夢を見続け、丸2日ほど寝ていたらしい。
その数日後、一通の手紙が届いた。

あの、男性からだった。

[先日は、桜の押し花をありがとうございました、あれをもらって以来父の体調がすこぶるよくなり、また今年も桜が見に行けそうです。満開の頃、改めてお礼に伺います。]

(よかった、よかった)

その手紙を握りしめ、桜を見に行った、私が寝ていた2日は天気がよく暖かかったらしく、桜が咲き始めていた。

(よし、さて今日も仕事するか)

私の仕事は、桜の木から見下ろした所にある川で砂金を取る事だった。